これまで「レイキ×介護」シリーズでは、五戒の「今日だけは怒るな」「今日だけは心配すな」「感謝して」「業をはげめ」についてお伝えしてきました。今回は、五戒の最後の教え、「人に親切に」を取り上げ、このシリーズを締めくくります。
正直にお伝えすると、この教えが一番、介護をしている方にとって受け入れがたいものかもしれません。「自分に余裕なんて全くないのに、人に親切になんてできるわけがない」。そう感じる方も多いのではないでしょうか。
今回はそうした葛藤の正体を近年の脳科学の知見も交えながら紐解き、この教えとどう向き合えばいいかをお伝えします。
この記事を読むことで
- 介護中に「親切にできない」と感じてしまう、脳科学から見た理由
- 「人に親切に」という教えが、本当は誰に向けられているのか
- 自分を労わるための、具体的な方法
- 罪悪感を抱えながらでも、外部の支援を頼っていい理由
といった内容がわかるようになりますので、ぜひ最後までお読みください。
優しくできないのは、脳の仕組みとして自然なことだった
親の介護をしていると、思うように優しくできない自分に自己嫌悪を感じることがあります。まず、はっきりお伝えしておきたいことは、優しくできないのはあなたの心が狭いからでも、冷たいからでもありません。
近年の社会脳科学の研究では他者の苦しみに反応するとき、脳の中で性質の異なる2つの回路が働くことが分かってきています。
一つは「情動的共感」と呼ばれる反応です。これは、相手の痛みをまるで自分自身の痛みであるかのように感じてしまう状態で、脳の中でも「痛み」を処理する領域が強く働くことが確認されています。介護のように相手の苦しみに日々触れ続ける環境では、この反応が慢性的に働き続け、脳が過負荷を起こしてしまいます。
その結果として感情が麻痺したり、些細なことにイライラしやすくなったりする——これがいわゆる「共感疲労」の正体です。近年の研究では、より正確には「共感的苦悩疲労」と呼ぶべき状態だとも指摘されています。
もう一つは、「コンパッション(慈悲)」と呼ばれる状態です。これは相手の苦しみを自分の痛みとして引き受けるのではなく、「なんとか和らげてあげたい」という温かい関心を向ける状態で、脳の中でも報酬や愛情に関わる領域が働くとされています。この状態では他者の苦しみに直面しても圧倒されにくく、温かさやつながりを感じながら関わり続けられると考えられています。
つまり「優しくできない」という状態は意志や人間性の問題ではなく、「共感」が過剰に働きすぎて疲弊している状態である可能性があるということです。この視点を持つだけでも、自分を責める気持ちが少し和らぐのではないかと思います。

「人に親切に」は、誰に向けられた教えなのか
ここで、レイキの五戒「人に親切に」という教えをあらためて捉え直してみます。
この教えは「常に完璧に、誰にでも優しくあれ」という無理な要求ではありません。これまでお伝えしてきた「今日だけは」という前置きがこの教えにも同じようにかかっています。「一生、誰に対しても親切であり続けなければならない」のではなく、「今日という一日、自分にできる範囲で」という前提があるのです。
そして、忘れられがちなことをもう一つお伝えします。この「人」の中にはあなた自身も含まれているということです。
親に対して優しくすることばかりに意識が向きがちですが、五戒の教え全体を振り返ると「怒るな」「心配すな」は、まず自分自身の心のあり方に向けられた教えでした。「人に親切に」もまた、まず自分自身に親切であることが土台になければ、他者への親切として続けていくことはできません。
自分が空っぽのコップになってしまっては、誰かに分け与える水は残っていないのです。

自分を労わるための、具体的な方法
「自分に親切にと言われても、具体的にどうすればいいのか分からない」という方のために、実践しやすい方法をいくつかご紹介します。
自分の胸に、そっと手を当ててみる
強いストレスや罪悪感を感じたとき、自分の胸や腹部に、両手をそっと当ててみてください。人は誰かから温かく触れられることで安心感を得るようにできていますが、これは自分自身で自分に触れる場合にも、同じように働くとされています。
ゆっくりとしたペースで手を当てながら、心の中で「辛かったね」「よくがんばっているよ」と、親しい友人にかけるような言葉を自分自身にかけてあげてください。トイレ休憩など、わずかな時間でも実践できます。
「今日だけは」を、自分への言葉として使う
これまでお伝えしてきた「今日だけは」というレイキの言葉を、自分自身をいたわるための言葉として使うこともできます。
「今日だけは、自分に厳しくするのをやめよう」「今日だけは、完璧じゃなくていいことにしよう」——このように心の中で唱えることで、完璧を求めすぎる気持ちが少し和らぎます。
呼吸に意識を向ける
介護の合間、わずかな時間でもできる方法として、呼吸に意識を向けることも有効です。たとえば、鼻から4秒かけて息を吸い、7秒間止め、口から8秒かけてゆっくり吐き出す、という方法があります。吐く時間を長くすることで、心身が落ち着きやすくなるとされています。
これらはいずれも、特別な準備がなくても、介護の隙間時間に取り入れられるものです。

「親切」を狭く捉えすぎない
もう一つ、視点を広げておきたいことがあります。それは、「人に親切に」の対象は介護される親だけではないということです。
- 一緒に介護をしている家族やきょうだいに、労いの言葉をかける
- ケアマネジャーやヘルパーなど、支援してくれている人に感謝を伝える
- 自分自身の頑張りを、自分でねぎらう
介護は一人で完結するものではありません。周囲の人との関わり全体の中に「親切」を広げて捉えることで、「親に優しくできているか」という一点だけに縛られずに済むようになります。

「休むこと」への罪悪感について
デイサービスやショートステイなどを利用して、一時的に介護から離れる「レスパイトケア」を罪悪感から利用しづらいと感じる方は少なくありません。「親を預けて自分だけ楽をしていいのか」という気持ちは、それだけ責任感と愛情を持って向き合ってきた証でもあります。
ただ、休息を取らないまま疲労が蓄積すると感情のコントロールがきかなくなり、結果として望まない形で厳しい態度を取ってしまうことにつながりかねません。
休むのは怠けることではなく、介護を長く続けていくために必要な「整備の時間」だと捉え直していただければと思います。罪悪感が完全になくならなくても、まずは物理的に距離を置いてみることが次の一歩になります。
またこうした支援は、地域包括支援センターを通じて相談できます。ショートステイの利用調整だけでなく介護用品の給付、見守り機器の導入支援など、自治体によって様々な支援策が用意されています。
「介護が辛い」「少し休みたい」と、まず言葉にして相談してみること自体が、自分への親切の第一歩になります。
【まとめ】五戒が伝えてきたのは、すべて「今、ここ」の自分へのやさしさ
今回は、レイキ×介護シリーズの最後として、五戒「人に親切に」について解説しました。
【今回のポイント】
- 優しくできないのは、脳の中で「共感」が過剰に働き、疲弊している状態である可能性がある
- 「人に親切に」にも「今日だけは」という前提があり、完璧を求める教えではない
- 「人」にはあなた自身も含まれており、まず自分への親切が土台になる
- セルフタッチや呼吸法など、隙間時間でできる自分への労わり方がある
- 休むことへの罪悪感を抱えたままでも、まずは外部の支援を頼ってみることが大切
これまでこのシリーズでお伝えしてきた「怒るな」「心配すな」「感謝して」「業をはげめ」「人に親切に」という5つの教えは、すべて「今、この瞬間の自分に、少しだけやさしくあってほしい」という、一つの願いに集約されているように思います。
介護という終わりの見えない毎日の中で、レイキの五戒が日々を少しでも軽くする視点の一つになれば幸いです。
[付記]レイキと介護についてより深く知りたい方へ
今回の記事を読んでレイキや介護についてより深く知りたくなった方へ、以下を御案内します。
【レイキを深めたい方へ】
レイキをより深く知りたい方には、レイキに関して努めて科学的・論理的に情報をまとめた自著『氣付きと癒しのレイキ -次にわたしが選ぶヒーリング』がお勧めです。
レイキヒーリングにおいて重要なのはレイキの知識とレイキを扱う感覚です。そのどちらもが偏らないように記された本となります。どのような内容かを先に知りたい方はこちらの記事を参照してください。
【介護を深めたい方へ】
介護を深めたい方には、私の介護ブログや自著『お互いにありのままでいられる「想い紡ぐ介護」への招待』がお勧めです。介護現場で15年積み重ねてきた知識・哲学を余すことなく記した内容となっています。
介護の本質とは「『生命の価値』の保障」であり、その生命が現代社会でどのように扱われているか。それを受けて私たちはこれから何をすべきか。自分や大切な人々、次の世代をどのように介け護るのか。その内容を先に知りたい方はこちらの記事を参照にしてください。
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