前回、介護福祉士である私がなぜレイキ講師になったのか、その経緯をお伝えしました。今回は「レイキ×介護」の2本目として、介護をされている方の多くが直面する、「怒り」という感情について取り上げます。
「何度言えばわかるの」「どうして私ばかりが」——親の介護をしていると、こうした感情が湧き上がってくることは、決して珍しいことではありません。今回は、介護の現場で実際によく見られる怒りの背景と、レイキの教えである「五戒」から見えてくる向き合い方について、お伝えします。
この記事を読むことで
- 親の介護で怒りが湧く、よくある背景
- レイキの教え「五戒」に込められた考え方
- 「今日だけは」という言葉が持つ意味
- 怒りとどう付き合っていけばいいか
といった内容がわかるようになりますので、ぜひ最後までお読みください。
「どうして私が」という怒りは、あなただけのものではありません
親の介護をする中で怒りが湧いてくるのは、あなたの性格が冷たいからではありません。むしろ、真剣に向き合っているからこそ生まれる感情だと、介護の現場では広く理解されています。
怒りが生まれやすい背景には、主に以下のようなものがあります。
- 何度も同じ説明・介助を繰り返すことへの精神的な負担
- 元気だった頃の親との違いに戸惑い、ギャップを感じ続けること
- 自分の時間が確保できず、休息が取れないまま疲労が蓄積すること
- 「兄弟姉妹の中で自分ばかりが介護をしている」という不公平感
介護の現場を15年見てきた立場からお伝えすると、怒ってしまう方の多くは、普段から我慢強く、周囲に弱音を吐かない傾向にあります。「きちんと介護をしよう」という強い思いがあるからこそ、その分だけ怒りも生まれやすくなる、という側面があるのです。
認知症の場合、親の側にも「怒りやすくなる」理由がある
認知症をお持ちの親である場合、親自身が怒りっぽくなったように感じることもあります。これは加齢や認知症によって、感情のコントロールを司る脳の部位(前頭葉)の働きが弱くなることが背景にあるとされています。感情にブレーキがかかりにくくなり、不快な気持ちがそのまま言葉や態度に出てしまいやすくなるのです。
つまり、介護をする側にも、される側にも、それぞれ怒りが生まれやすい理由があります。どちらか一方が悪いという話ではないという前提を持っておくことは、感情的な負のループを断ち切る第一歩になります。

レイキの教え「五戒」に込められた考え方
ここで、レイキの創始者・臼井甕男氏が遺した「五戒」という教えをご紹介します。
今日だけは
怒るな
心配すな
感謝して
業をはげめ
人に親切に
これは、臼井氏が治療を行う中で「人間は心を変えなければ、本当に元氣にはならない」という考えに至り、生まれたとされる教えです。レイキの初級講習でもお伝えしている、レイキを実践するうえでの土台となる考え方です。
五戒は正式には「招福の秘法 萬病の霊薬」と題され、朝晩に合掌して心に念じ、口に唱えるものとして伝えられています。単なる標語ではなく、毎日繰り返し自分に言い聞かせることで、少しずつ心のあり方を整えていく実践として位置づけられている点が特徴です。

なぜ「一生怒るな」ではなく「今日だけは」なのか
この教えで特に重要なのが「今日だけは」という言葉です。この「今日だけは」は「怒るな」以降に係り、過去や未来に囚われることなく『今』この瞬間に意識を向けることを重視する考え方です。
例えば「一生怒ってはいけない」「絶対に心配してはいけない」と言われると、それ自体が新たなプレッシャーになってしまいます。特に介護のように先の見えない状況が続く中では、「一生」という言葉はかえって心を追い詰めてしまいかねません。
「今日だけは」という言葉には、たとえ昨日怒ってしまっても、明日また怒ってしまうかもしれなくても、「今日という一日だけ」を大切にすればいいという余白を持たせる優しさが込められています。継続を強いる戒めではなく、「今この瞬間」に意識を向けるためのスイッチとして機能する言葉なのです。

「今日だけは」を、介護の場面に置き換えてみる
この「今日だけは」という視点を、実際の介護の場面に当てはめてみます。
- 「一生涯、優しい介護者でいなければ」と考えるのではなく、「今日という一日だけ、少し意識してみよう」と捉え直してみる
- 昨日きつく言ってしまったとしても、それを責め続けるのではなく、「今日はどう過ごすか」に意識を向け直す
- 「ずっとこの状態が続くのか」という将来への不安ではなく、「今、目の前で何ができるか」に焦点を当てる
介護は終わりの見えにくい営みです。だからこそ「一生」「ずっと」という時間軸で物事を捉えてしまうと、心が持たなくなってしまいます。「今日だけは」という五戒の教えは、まさにそうした先の見えない不安から、「今この瞬間」へと意識を引き戻すための知恵だと考えています。

その場でできる、怒りとの向き合い方
「今日だけは」という考え方に加えて、怒りが込み上げてきたその瞬間に使える具体的な向き合い方もご紹介します。
一呼吸置いてから、五戒を心の中で唱える
怒りの感情は湧き上がってから数秒でピークを迎え、その後は落ち着いていくとされています。何か言い返したくなった瞬間、まず一度深呼吸をしてから、心の中で「今日だけは怒るな」と唱えてみてください。
これは、アンガーマネジメントの技法として知られる『6秒ルール』(怒りのピークをやり過ごすために、数秒間だけ間を置く方法)とも共通する考え方です。
アンガーマネジメントとは、怒りを予防し制御するための心理療法プログラムであり、怒りを上手く分散させることができると評価されている。
怒りはしばしばフラストレーションの結果であり、また自分にとって大事なものを遮断されたり妨害された時の感情でもある。怒りはまた、根底にある恐れや脆弱感に対する防衛機制でもある。アンガーマネジメント・プログラムでは、怒りは定義可能な理由によって生じる、論理的に分析可能な強い感情であり、適切な場合には前向きにとらえてよいものだと考えられている。日本で有名なアンガーマネジメントの方法として、「怒りは6秒経てばピークを過ぎるので、6秒我慢すればよい」という「6秒ルール」がある。
「6秒ルール」は、教育現場向け学校心理学の書籍でも度々紹介されている。日本アンガーマネジメント協会代表理事の安藤俊介も著書で取り上げている。生理学研究所名誉教授で脳科学者の柿木隆介もエビデンスに基づき容認している。
一方で「単に6秒待つだけでは不十分である」とする批判もある。「6秒ルール」は出所不明で、日本以外では有名でないとする指摘もある。
このように、レイキの五戒は単なる精神論ではなく、怒りという感情のメカニズムに沿った「理にかなった知恵」でもあるのです。

セルフヒーリングを、感情を落ち着ける時間として使う
レイキヒーリングは他者に対してだけでなく、自分自身に対しても行うことができます。介護から少し離れられる時間ができたら、数分でも構いませんので、深呼吸をしながら自分の胸や頭に手を当てる時間を持ってみてください。
これは特別な技術がなくてもできる、「今、この瞬間の自分」に意識を戻すための簡単な習慣です。怒りを感じた後の自己嫌悪も、こうした短い時間の中で少しずつ和らげていくことができます。
怒りを感じた自分を、まず責めないこと
最後にお伝えしたいのは、怒ってしまった自分を、必要以上に責めないでほしいということです。
怒りが生まれるのは疲れが溜まっているサインであることが多く、あなたの人間性の問題ではありません。もし怒りを感じた日があったなら、それを「疲れているサイン」として受け止め、休息を取ることを優先してください。
そして、一人で抱え込みすぎないことも大切です。ケアマネジャーへの相談、介護サービスの活用、家族との分担の見直しなど、外部の力を借りることも、五戒でいう「今日だけは」を実践する一つの方法だと私は考えています。
もし、こうした心の負担が続き、専門的な支援が必要だと感じる場合は、地域包括支援センターをはじめとした窓口に相談することも、選択肢の一つとして知っておいていただければと思います。
【まとめ】「今日だけは」という言葉が持つ、優しさという知恵
今回は親の介護で感じる怒りと、レイキの教え「五戒」から見えてくる向き合い方についてお伝えしました。
【今回のポイント】
- 介護での怒りは、真剣に向き合っているからこそ生まれる自然な感情
- 認知症の場合、親の側にも脳の働きの変化による怒りやすさの理由がある
- レイキの五戒「今日だけは怒るな」には継続を強いず、今この瞬間に意識を向けさせる優しさが込められている
- 「一生」ではなく「今日だけ」という時間軸で捉え直すことで、心の負担を和らげられる
- 深呼吸と五戒を組み合わせることで、怒りのピークをやり過ごす具体的な実践ができる
- 怒ってしまった自分を責めすぎず、休息や外部の支援を頼ることも大切
介護は直接援助というかたちで目の前の人と向き合う営みです。
その中で生まれる感情に、レイキの教えという少し違う角度からの視点を持つことが、日々を少しでも楽にする一つのきっかけになれば幸いです。
[付記]レイキと介護についてより深く知りたい方へ
今回の記事を読んでレイキや介護についてより深く知りたくなった方へ、以下を御案内します。
【レイキを深めたい方へ】
レイキをより深く知りたい方には、レイキに関して努めて科学的・論理的に情報をまとめた自著『氣付きと癒しのレイキ -次にわたしが選ぶヒーリング』がお勧めです。
レイキヒーリングにおいて重要なのはレイキの知識とレイキを扱う感覚です。そのどちらもが偏らないように記された本となります。どのような内容かを先に知りたい方はこちらの記事を参照してください。
【介護を深めたい方へ】
介護を深めたい方には、私の介護ブログや自著『お互いにありのままでいられる「想い紡ぐ介護」への招待』がお勧めです。介護現場で15年積み重ねてきた知識・哲学を余すことなく記した内容となっています。
介護の本質とは「『生命の価値』の保障」であり、その生命が現代社会でどのように扱われているか。それを受けて私たちはこれから何をすべきか。自分や大切な人々、次の世代をどのように介け護るのか。その内容を先に知りたい方はこちらの記事を参照にしてください。
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