レイキヒーリングを行うにあたり、『氣』への理解を深めることはヒーリングの質を高める上で重要となります。
何故なら、体感で理解しているレイキを言葉でどう説明できるかは、ヒーリングを受けていただくお相手にとっての安心感につながるものであり、レイキ(靈氣)の『氣』をどのように捉えるかは「手に感じる反応」、その解釈の幅を広げる可能性があるからです。
またこれからレイキヒーリングを受けてみたいとお考えの方にとって、今回のご紹介する本によってレイキへの考え方が「オカルトめいた怪しいもの」から「何千年も前から書物に記された、研鑽と実績のあるもの」へと変わるかもしれません。
そのようなワクワク感を持ちつつ、今回はミシマ社より出版された若林理砂氏の著書『気のはなし 科学と神秘のはざまを解く』の概要をご紹介し、レイキヒーリングの力量や恩恵を高める一助となるよう解説していきます。
著者の紹介
著者である若林理砂氏の経歴は以下の通りです。
臨床家・鍼灸師。1976年生まれ。高校卒業後に鍼灸免許を取得。早稲田大学第二文学部卒(思想宗教系専修)。2004年にアシル治療室を開院。予約のとれない人気治療室となる。古武術を学び、現在の趣味はカポエイラとブラジリアン柔術。著書に『絶対に死ぬ私たちがこれだけは知っておきたい健康の話』(ミシマ社)、『安心のペットボトル温灸』(夜間飛行)、『決定版 からだの教養12ヵ月――食とからだの養生訓』(晶文社)など多数。
気のはなし ――科学と神秘のはざまを解く/ミシマ社
「気のはなし 科学と神秘のはざまを解く」の概要
「気のはなし 科学と神秘のはざまを解く」では
・気の起源
・中国思想家たちの「気」にまつわる解釈
・易や風水の気
・東洋医学の気
・科学の気
・養生と気
といった内容について、できるかぎり事実ベース、データベースの観点から、会話口調で時にコミカルに解説されています。
この中でも「ヒーラーにとって大切なポイント」と「ヒーリングを受ける方(クライアント)によって大切なポイント」について、一つずつ深掘りしていきます。
【考察】ヒーラーにとって大切な「気」への理解
ヒーラーにとって大切な「気」への理解とは、「氣(エネルギー)は巡る」ということです。
こちらでもお話ししたように『氣』とは「气」+「米」でエネルギーを意味し、『気のはなし』においてはこの「气」+「米」について、もう少し詳しい話をされています。
中国後漢、許慎の『説分解字』において「气」とは雲の象形文字であり、雲のようにモヤモヤっとしたものであるとされています。
説文解字では「氣」は「饋客芻米也、從米气聲。」とし、(中略)雲気の意であった气が本字で、芻米の意の「氣」が音通でつかわれるようになった、その他の意味は雲気の意味からの派生であるというのである。
気/Wikipedia
また、同様に説文では「气」は「雲气也、象形。」とある。
そして「米」はお客さんに持たせるお土産「饋(き)」であり、この「米」に「气」の性質が加えられたものが『氣』だと考えられます。
では「米」とはどういうものかと言えば、主食(エネルギー)であるのと同時に
「炊けば湯気が出て、湯気は集まれば雲となり、雲は重なれば雨となり、雨が降れば稲が育って米となる」
といった自然循環の一部でもあります。このことから『氣』は「自然循環のエネルギー」であり、「氣は巡る」ものだと言えます。
こうした『氣』の性質への理解は、レイキヒーラーにとって以下のような大切な『氣付き』を与えるでしょう。
①靈氣(レイキ)は「高次元エネルギー」「宇宙エネルギー」と呼ばれているが、それらは総じて『自然』からのエネルギーである。
→自然体、『ありのまま』のエネルギーを用いることを重要視する
②「氣は巡る」ため、ヒーラーとクライアントの関係性は相互に作用する。
→『お互い様』であることを意識し、状況が変われば立場も変わることをお互いに理解する
③癒し、癒される人が各々レイキを広めることで自然循環エネルギーが波及し、次世代へ継承される。
→自然サイクルによる好循環が人々を癒し、次世代をより健やかにする。
①自然システムによる「ありのまま」のエネルギー
「高次元」にせよ「宇宙」にせよ、それらは総じて『自然』となります。
ここで言う自然とは「森林や川、海などの物質的な自然」である以上に『あらゆる物事を成立させるシステム』という概念としての自然になります。
それは古代ギリシアの「φύσις ピュシス(自然)」で言うところの『世界の根源』であり、レイキを構成する未解明の素粒子を自然システムを通じてエネルギーとして使用するのがレイキヒーリングではないか、という考え方です。
古代ギリシアでは「φύσις ピュシス(自然)」は世界の根源とされ、絶対的な存在として把握された。
自然/Wikipedia
古代ギリシア語における「φύσις ピュシス」の意味は「生じる」「成長する」といった意味をもっていた。またソフォクレスやエウリピデスの語法では「誕生」「素性」あるいは「天性」という意味がある。
そうなると、この自然システムから外れないことが「循環する」性質を生み出しやすいことがうかがわれます。
自然からのエネルギーをありのままの状態で使うこと(=自分のエネルギー、内氣を混ぜないこと)が『氣』の性質に合うヒーリングとなり、自然循環を促すエネルギーが全身を巡ることで細胞一つひとつもその循環システムに則って作用するのかもしれません。
そして、僕たちはこの作用を「自己調整力」や「自然治癒力」と呼んでいるのではないでしょうか。
そうした予想を立てられることがヒーラーにとって
「自分の扱うレイキについて説明できる」=「ヒーリングへの自信につながる」
という点で大切であり、クライアントの安心感にとっても重要な点になります。
レイキエネルギーの性質を保つためには『自然』への純粋性が求められますが、「個人の目的」を実現させるためにレイキに『自分のエネルギー(内氣)』を混ぜるケースも見られます。
これはどちらが良い・悪いではなく「そのエネルギーを使う目的は何か」の違いであり、目的に合わせたエネルギーの選択をするという話になります。
②ヒーラーとクライアントの関係性は「お互い様」
ヒーリングをはじめ「人を癒す」という行為は、ともすればヒーラーの立場がクライアントよりも上かのような錯覚、すなわち『上下関係』で成立しているかのような誤解の下で行われる場合があります。
倫理的に考えればどのような人も「法の下に平等」であり、職業や立場に優劣はありません。(たとえ現実社会がそうでないのだとしても、それは個々の問題です)
また論理的に考えても、物質の最小単位とされる素粒子が『観測』されることで初めてその性質を定めることからも
「あらゆる物事はそれが『観測』されなければ成り立たない」
→「ヒーリングはクライアントがいなければ行うこと(存在が証明されること)もできない」
→ヒーラーはクライアントがいて初めてヒーラーで「いられる」
わけですから、ヒーラーとクライアントの関係性は『上下関係』ではなく『水平関係』、すなわち「お互い様」だと言えるのです。
「お互い様」であることが自然であるのに対し、個々の事情で『上下関係』になっているのだとしたら、それはとても『不自然』なことなので長続きしないでしょう。
何故なら不自然とは「循環しないシステム」であり、「どちらか一方が利を得て、どちらか一方が損をする」状態を指し、そのままでは必ず枯渇する宿命にあるからです。
こうした状態を避けるためには「お互い様」という循環システムの中にヒーラーとクライアントがいる状況を作ること、すなわち『自然』のままであることが求められます。
ヒーリングにおいて「ヒーラー」「クライアント」という役割なのだとしても、状況が変われば別の関係性になること。これを忘れずにお互いがお互いの役割で今ここに在ることに感謝できると良いですね。
③自然循環エネルギーを波及させ、次世代へと「想い紡ぐ」
自然の循環システムの中にいることで、人々の心身状態も改善されていきます。
それは「衣食住」で見ても、『不自然』のシステムから生まれたものに囲まれた生活を送ることで様々な病に陥る現状から見ても明らかだと言えます。
衣→化学繊維による皮膚トラブル、アレルギーなど
食→食品添加物や化学調味料、生産地の土壌・水質問題、ゲノム編集食品・化学肥料などによる生活習慣病など
住→ハウスダストなどのアレルギー、水道水、電磁波、過剰な電気刺激など
これらは現代社会を生きるための必需品とも言えるものですから、全てを手放すことは叶いませんが、一つひとつを「少しずつ自然に近づけること」はできます。
たとえば自然に近しい天然素材を選んでみたり、化学物質を避けた原材料で自炊したり、夜早く寝ることで電気・電磁波から受ける影響を少しでも抑えたりすることができるのです。
自然の循環システムに近づくことがレイキをはじめとしたエネルギー療法への親近感を生み、またレイキを通じて自然への親近感を思い出し、生活を自然に近づける意思も芽生えていく。
そうした好循環が生まれる時、自然循環システムによって生まれる『氣(エネルギー)』が人々の間に「良いもの」として広まり、レイキもまた選択肢の一つとして広まり好循環へ寄与することで広まっていく。
同じ『自然』由来のものであればお互いを妨げることなく調和し、自然の持つ循環システムに組み込まれていきます。
そして自然の循環システムには組み込まれることで、生命は「ありのまま」の状態で「お互い様」でそのシステムを支え合い、自然を大切にする想いを次の世代へ継承することができるのです。
この自然循環システムの具体例が『植林』であり、縄文人が木を伐採して利用するだけでなく木を植えて暮らしていたことが挙げられます。
今日も山々に木が生い茂ることで保水され、土砂崩れを防ぐだけでなく生態系を豊かにして自然界全体に実りを与えてくれています。
昨今課題となる二酸化炭素(CO2)を光合成によって利用し酸素(O2)を排出することはご存知の通りですが、こうした木々を伐採、あるいは荒地を再生せずに『再生可能エネルギー』を生み出す風力発電所や太陽光パネルを設置する動きが活発になっています。
それらが自然循環システムに則ったものであれば、自然と調和し生命を守るものとなりますが、現時点でも様々な問題を生み出しています。
このように、ヒーラーにとって大切な『氣』への理解とは、目の前のクライアントのみならず、生活環境、究極的には地球環境にまで視野を広げた「氣の流れ」を読むことにあります。
社会全体を俯瞰をすることで「クライアントがレイキを必要とする背景」にも目が向き、その背景を理解することで心身の「癒し」がより現実味を持って提供され得るのです。
【考察】クライアントにとって大切な「養生と気」
「気のはなし」では「養生と気」について、以下の解説されています。
・「寝る」と気
・「食う」と気
・「動く」と気
・体内の気の性質
・人が生まれるときの気
・人が亡くなるときの気
これらは総じて「人が生まれて、生き、そして亡くなるまでの一生にまつわる『気』」について説明したものであり、
一日の気の流れ、一年の気の流れが
「天の動向」(午前午後、四季などの『時間』)
「人間の生きる姿」(自分がいる環境などの『空間』)
とで一致する生き方をすることで陰陽の気が整い、『健やか』でいられる、という話です。
陰陽(いんよう・おんよう・おんみょう)とは、古代中国の思想に端を発し、森羅万象、宇宙のありとあらゆる事物をさまざまな観点から陽(よう)と陰(いん)の二つのカテゴリに分類する思想及び哲学。
陽と陰とは互いに対立する属性を持った二つの気であり、万物の生成消滅と言った変化はこの二気によって起こるとされる。
陰陽/Wikipedia
もっと噛み砕いて言うならば「『自然』に合った生き方をする」ことが健やかでいられる方法であり、とりもなおさず僕たちの生活環境は『不自然』にまみれている現実と向き合うところからがスタートラインになります。
「クライアントに大切な『養生と気』」においても、先ほど「ヒーラーにとって大切『気』への理解」でお話しした
「ありのまま」
「お互い様」
「想い紡ぐ」
の三点が活かされることになります。
自分自身の健康状態を改善して活き活きと過ごす姿を見せるところから始めて、周りにその様になれた理由を話して周りの人々も健やかにしていく。
「自分の気」のみならず「周りの気」を『自然』に合わせて良くすることで、自ずと自然循環システムを波及させていく様になるのです。
まとめ -レイキも「氣」であり、研究対象である-
内氣の混ざらない純粋なレイキエネルギーは自然循環システムの一部として、自然治癒力や自己調整力に働きかけることが期待されます。
それは米国国立医学図書館(NLM)が作成する、MEDLINE(メドライン)を含む医学分野の代表的な文献情報データベース(PubMed)における
「A Large-Scale Effectiveness Trial of Reiki for Physical and Psychological Health(レイキによる心身の健康への効果を検証する大規模試験)」
という論文によって
結果:合計N = 1411 回のレイキ セッションが実施され、分析に含まれました。ポジティブな感情、ネガティブな感情、痛み、眠気、疲労、吐き気、食欲、息切れ、不安、うつ病、全体的な健康状態など、すべての結果の測定で統計的に有意な改善が見られました (すべてのp値 <0.001)。
A Large-Scale Effectiveness Trial of Reiki for Physical and Psychological Health
結論:この大規模な複数施設での有効性試験の結果は、レイキの 1 回のセッションが身体的および心理的健康に関連する複数の変数を改善することを示唆しています。
このように有効性が示唆されていることからも、淡い期待ではなく統計的に明らかにされつつある期待と言えます。
※ URLは米国サイトのもの。
この論文一つでレイキによる効果が証明されたわけではありませんが、それでも米国政府公式Webサイトにてその可能性が示されたことは、レイキが
「オカルトめいた怪しいもの」
ではなく
「過去、そして現在においても人々の科学的思考によって研究され続ける『歴としたもの』」
である、と言えます。そしてこのことは「レイキの歴史」からみても矛盾なく、これからの時代にこそ『氣』やレイキは必要とされるものになるのです。
今回は若林理砂氏の著書『気のはなし 科学と神秘のはざまを解く』を読み解くことで、気への理解を深めて自然循環システムに合わせて生きることの大切さをお話ししました。
今回お話しした以外にも「中国思想家たちの「気」にまつわる解釈」「易や風水の気」「東洋医学の気」「科学の気」といった『気への興味・関心』についてより詳しく、親しみわかりやすい言葉遣いで解説されています。
レイキヒーリングを「したい」「受けたい」方々にぜひお勧めしたい一冊です。
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